介護士から見たユマニチュード
介護の現場と介護士の気持ち
介護士の気持ちが陥りやすい誤り

介護するということは、私は、生活を普通に送れるように手助けすることだと思っています。「普通」というのは、その人に合った無理のない状態ということです。
家族を介護する・仕事として介護する、介護する対象や介護をすることになるきっかけは人それぞれですが、介護する人の気持ちの平穏や幸せを思うのは介護する側の共通の想いではないでしょうか。
大幅な回復や治癒が難しく、現状維持が精一杯の病状であっても少しでも、不快な思いを減らして気分よく過ごしてもらいたいものです。
「ユマニチュード」ではケアのレベルを見極めることが大切だとしています。
- 回復を目指すレベル
- 現在の機能を保つレベル
- 最後まで寄り添うレベル
優しく寄り添いどんなことでも介助することが本当にその方のケアのレベルに合っているのか。出来ることでも介助する、移動には車いすを常に使うというような、今できることや今もっている力を衰えさせるような手助けは為にはなりません。
健康状態を維持する(機能を維持する)ということは、高齢者や認知症の人にしてみたら簡単なことではありません。だからこそ、何から何まで手助けをして本人の能力を使わせないことは、結局は衰弱につながってしまうことがあります。
やさしい・丁寧でいい介護士だと言われていても、ケアのレベルを誤ると良いケアとはいえません。
利用者の気持ちに気が付ける介護
認知症のケアの最終目標は常に手探りです。

塾や習い事は最終目的がはっきりしていますよね。○○高校に合格する、25メートル泳げるようになる・・・というように、どうなりたいかがはっきりしています。また治療や療養するのにも、足を怪我したら、歩けるようなる・杖を使ってうまく歩けるようになる・・・というように目標は比較的明確です。
しかし、認知症のケアは常に進行する病状を見ながら、何が今できるケアなのかを考えていきます。現状の状態が来週・来月いつまで同じかの保証はどこにもありません。かと思っていれば、半年は同じ様子だね・・・ということもあります。
定期的にカンファレンス(検討会)やケアプラン(介護サービスの計画)の見直しは行われますが、私たちは何よりも日々相手(認知症の人)を見ること、表情や手の動き足の動き、食事の様子、などを見るように心がけています。
言葉に発さないことをも見つけられるように、体調の変化や何を不便に思っているかを、こちらが(介護する側)が気付くことができるといいなと思います。
どうしてほしいのか・何が不便なのか、というような気持ちをなかなか言えない方ももちろんいますし、本人も気が付いていない不便さがあるということも、認知症の方には多く見受けられます。
そんなことに気が付ける介護士、そして本人から気持ちを言ってもらえる介護士が、認知症ケアにあたる私の理想の介護士です。